障害者雇用タイムズ 制度のこと、実務のこと。一次資料から、わかりやすく。

「障害者雇用ビジネス」規制、結局どうなる?——第141回分科会の資料を読む

制度改正 公開 2026-08-31 障害者雇用タイムズ編集部

本日13時から第141回労働政策審議会障害者雇用分科会が開催された。議題は「障害者雇用の『質』——いわゆる障害者雇用ビジネスの規定・法規制の在り方/ガイドライン」と「法定雇用率の算定に係る考え方」の2つ。前日夜に公開された配布資料(資料ページ)から、事務局案の骨子と企業への影響を整理する。

結論を先に:規制の方向は「禁止でも許可制でもなく、届出制+ガイドライン」

資料1(障害者雇用の「質」について・45ページ)で示された事務局案の骨子は次のとおり。

論点事務局案の方向性
事業の定義「障害者雇用援助等事業」(仮称)を法律上に規定。就業場所の提供だけでなく、採用・配置・育成など雇用管理への反復継続的な関与(コンサルティング含む)まで対象を広げる
事業者への規制行政庁への事業開始の届出等の義務+告示ガイドラインに即した事業運営の努力義務。問題がある場合は報告徴収・指導・助言・勧告
利用企業への規制障害者雇用状況報告(6.1報告)に新しい報告項目——①利用する事業者の法人名・所在地 ②就業場所・人数・業務内容・管理担当者 ③今後の利用予定
利用企業名の公表行わない方向(報告義務とガイドラインに基づく指導・助言で是正を図る)

研究会報告書(2026年2月)の段階から、「禁止」は憲法上保障される経済活動の自由に照らして法制上の課題がある、と明記されている。今回の資料でも禁止・許可制は採られず、行政が事業者を把握し、問題事案に指導監督を行える体制を作る方向が固まりつつある。

農園型の「実雇用率からの算定除外」は出なかった

事前に一部で観測されていた「障害者雇用ビジネスを利用した雇用を実雇用率の算定から除外する」案は、今回の資料には含まれていない。資料2(法定雇用率の算定に係る考え方)が扱うのは、算定式の分子に含まれる「失業している対象障害者」のカウント方法(ハローワークの有効求職者のうち、一定期間内に現に求職活動を行っている者に絞る案)と、算定に用いる年齢範囲(15〜64歳→全年齢とする案)という技術的な論点で、農園型などの利用企業の雇用者の扱いを変えるものではない。

ガイドラインの中身:鍵は「有為な活用」と「自社移行」

資料1の論点2では、ガイドライン(告示)の具体的イメージが示された。事業者向けには、障害者雇用に精通した資格者の配置、スタッフの教育訓練、そして利用企業への支援メニュー——①成果物が利用企業の事業活動で有為に活用されるための提案・支援 ②業務切り出し・業務設計・再構成 ③最終的に利用企業が自社の就業場所での雇用に移行していくための提案・支援——の提供、および年1回以上の情報開示(事業者ホームページへの掲載)が挙げられている。

利用企業向けには、障害者雇用の「質」のガイドラインの中で一体的に、ガイドラインに沿わない事業者の利用は望ましくない旨、成果物は自社の事業活動で有為に活用すべき旨、一定期間の利用の後は自社就業場所への移行が望ましい旨を示す方向だ。

「有為な活用」の判断基準としては、もともと自社で実施していた業務から障害特性に合わせて業務切り出し・プロセス分解・再構成を行っている場合や、業務の必要性・有用性がコストと均衡の取れた形で説明できる場合が例示されており、今後の議論で具体化される。

企業がいま準備すべきこと(3点)

  1. 6.1報告の新項目に備える。 障害者雇用ビジネスを利用している企業は、利用事業者名・就業場所・人数・業務内容・利用予定の報告が求められる方向。現時点の利用状況を社内で整理しておくと、制度化されたときに慌てない。
  2. 「有為な活用」を説明できるようにする。 雇用している障害者の業務が自社の事業活動にどう貢献しているかの検証は、規制と無関係に、法定雇用率2.7%時代(2026年7月施行済み)の雇用管理の土台になる。
  3. 事業者選定の目を持つ。 ガイドライン施行後は、事業者に年1回以上の情報開示が義務づけられる方向。開示に応じない事業者・移行支援メニューのない事業者は選定リスクとして扱うのが安全だ。

今後のスケジュール

分科会の審議は継続し、意見書のとりまとめ(年内〜2027年)→法案提出→施行という流れが見込まれる。当サイトでは分科会の開催ごとに資料を読み、「障害者雇用ビジネス規制の現在地」を更新していく。


出典(いずれも2026年8月31日閲覧):第141回労働政策審議会障害者雇用分科会 資料ページ/資料1「障害者雇用の『質』について」/資料2「法定雇用率の算定に係る考え方について」/第141回開催案内。本記事は公開資料に基づく編集部の解説であり、審議の結論を示すものではありません。当日の議論の内容は議事録公開後に追記します。